IEC 61000-6-3:2026:住宅環境のエミッション規格に9〜150kHzと磁界が加わる
住宅環境向けEMC共通エミッション規格の第4版が2026年4月に発行された。何が変わったか、欧州と中国はいつ追随するか、どのインバータ・蓄電製品が影響を受けるかを整理する。

- 01IEC 61000-6-3第4.0版は2026年4月7日に発行され、2020年版を置き換える技術改訂。
- 02新規:磁界エミッション(ワイヤレス電力伝送を含む)、AC電源ポートの限度値を9〜150kHzまで拡張、無線機能付き製品を適用範囲に追加、ラック機器のFAR限度値。
- 03欧州:EN IEC 61000-6-3:2026は2026年5月28日に発行。抵触する国家規格は2029年5月31日までに廃止。
- 04欧州委員会サイトのEMC指令整合規格一覧は、依然としてEN 61000-6-3:2007 + A1:2011を引用している。
- 05中国:強制規格GB 17799.3-2023はIEC 61000-6-3:2020と一致しており、1版遅れている。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 規格 | IEC 61000-6-3:2026 EMC — 第6-3部:共通規格 — 住宅環境における機器のエミッション |
| 版 | 4.0、技術改訂 |
| 発行 | 2026年4月7日 |
| 置き換え | IEC 61000-6-3:2020(第3版) |
| 適用範囲 | 専用の製品・製品群エミッション規格がない住宅用機器。9kHz〜400GHzの無線受信を保護 |
何が変わったか
IECが挙げる主な技術変更は4点。
- 磁界エミッション要求の追加。ワイヤレス電力伝送(WPT)機能の測定を含む。
- 低圧AC電源ポートの要求を9kHz〜150kHzへ拡張。 これまで電源ポートの伝導エミッション限度値は150kHzからだった。
- 無線機能を持つ製品を適用範囲に追加。 意図的送信とその高調波、帯域外エミッションは引き続き除外され、製品のそれ以外の部分が対象となる。
- ラック搭載機器の全無響室(FAR)での限度値を追加。
パワーエレクトロニクスに最も効くのは2点目である。インバータや蓄電用コンバータは数十kHzでスイッチングすることが多く、スイッチング周波数と低次高調波が9〜150kHz帯に入る。150kHz以上だけを想定した電源フィルタは見直しが必要になり得る。
一つの規格、併存する3つの版
| 地域 | 適用される版 | 状況 |
|---|---|---|
| IEC | IEC 61000-6-3:2026 | 2026年4月7日発行 |
| 欧州(CENELEC) | EN IEC 61000-6-3:2026 | 2026年5月28日発行。国家採用は2027年5月31日まで。EN IEC 61000-6-3:2021は2029年5月31日までに廃止 |
| EU官報 | EN 61000-6-3:2007 + A1:2011 | 欧州委員会サイトのEMC指令整合規格一覧で依然この版。一覧上の決定 (EU) 2019/1326 の最終改正日は2022年6月9日 |
| 中国 | GB 17799.3-2023(強制) | 2024年7月1日施行。IEC 61000-6-3:2020と一致 |
EMC指令では、適合の推定は官報に引用された版から生じる。製造者はより新しい版を適用してもよいが、その場合は技術文書で必須要求をどう満たすかを示す必要がある。
影響を受ける製品
共通規格は、製品・製品群のEMC規格がない場合にのみ適用される。EV充電器には独自の規格(IEC 61851-21-2、中国ではGB/T 18487.2)があり、UPSにはIEC 62040-2、PV電力変換装置にはIEC 62920がある。ただしEUの実務では、住宅用インバータや家庭用蓄電システムの適合宣言書に共通規格EN IEC 61000-6-1と-6-3が併記されることが多い。家庭用蓄電、エネルギー管理ユニット、無線モジュール付きの壁掛け機器が、新しい要求に当たる可能性が最も高い。
何をすべきか
- EMC評価の根拠を確認する。 製品規格で試験しているなら、共通規格の改版は直接には影響しない。
- 欧州向けの新規設計: 開発段階からAC電源ポートの9kHz以上の伝導エミッションを測定し、WPT機能があれば磁界エミッションも測る。試験所には報告書に版を明記してもらう。
- 既に市場にある製品: 引用版が変わらない限り、直ちに再試験する必要はない。2029年5月31日までに更新計画を立てる。
- 中国: 改訂GBが出るまではGB 17799.3-2023で試験する。
よくある質問
IEC 61000-6-3:2026はEV充電器に適用されるか
通常は適用されない。EV充電器には独自のEMC製品規格(IEC 61851-21-2、中国ではGB/T 18487.2)がある。共通規格は製品・製品群規格がない場合にのみ適用される。
EUで既に販売中の製品は再試験が必要か
直ちには不要。EMC指令の整合規格一覧は依然EN 61000-6-3:2007 + A1:2011を引用しており、EN IEC 61000-6-3:2021の廃止は2029年5月31日。新規設計は2026年版で確認するとよい。
中国では何が適用されるか
2024年7月1日施行の強制規格GB 17799.3-2023。前版のIEC 61000-6-3:2020と一致している。
出典
- IEC webstore: IEC 61000-6-3:2026, edition 4.0 (abstract and list of technical changes)
- CENELEC record via iTeh: EN IEC 61000-6-3:2026 (publication, dop and dow dates)
- European Commission: harmonised standards under the EMC Directive 2014/30/EU (summary list and amendments)
- National Public Service Platform for Standards Information: GB 17799.3-2023


